MEDICAL 各分野の内容

目次

現代の一般歯科臨床では、「口腔外科処置=専門医への紹介」という構図が根強く残る一方、日々の臨床現場では“ちょっとした外科”が避けて通れません。特に親知らず(智歯)の抜歯、難抜歯、外傷、粘膜疾患、小帯切除など、患者のQOLに直結する外科的判断と処置を求められるケースが日常的に発生します。

本セミナーでは、開業医で働く1~5年目の若手歯科医師を対象に、臨床現場でよく遭遇する“外科対応”を体系的かつ実践的に学べる内容を提供します。

口腔外科とは、顎顔面・口腔領域における外科的な治療全般を担う専門分野です。大学病院などでは腫瘍摘出、顎変形症手術、顎関節症手術などの大規模な手術が行われていますが、実は一般開業医の現場でも小規模な外科的処置は日常的に必要とされます。

ここでいう“ミニ手術”とは、比較的低侵襲で短時間に実施可能な処置ながら、術者の判断と技術が問われる外科的対応を指します。

1. 水平埋伏智歯の抜歯

下顎の水平埋伏智歯は、手術の中でも最も頻度が高く、難易度が急激に上がる処置の一つです。適切なフラップ設計、骨削除の範囲、歯牙の分割方法、そして下歯槽神経との距離を考慮した術前評価が不可欠です。CTの導入により、近年では神経損傷リスクを事前に把握することが可能となり、安全な施術の鍵となっています。

一般的な手技の流れは以下の通りです:

1.局所麻酔の十分な浸潤

2.歯肉切開と粘膜弁の剥離:直線的切開よりもエンベロープや放射状切開が望ましい場合もあり、術野の視認性と縫合のしやすさを考慮します。

3.骨削除:バーカッターで歯冠周囲の骨を削除し、脱臼のスペースを確保。

4.歯牙の分割:歯冠部の分割が基本ですが、歯根の湾曲度によっては根部の分割が必要になることもあります。

5.抜去と掻爬:歯牙を抜去後、感染源や残存歯根がないか確認し、掻爬を行います。

6.縫合と止血:剥離面が大きくなるほど縫合のテンションや止血管理が重要になります。

注意点としては、骨の削りすぎ分割の位置ミスにより下歯槽神経を損傷したり、無理な把持・牽引により骨折を招いたりするリスクがある点です。また、術後の腫脹・開口障害・感染にも備え、術前に必ず抗菌薬や鎮痛薬の指導、場合によってはステロイドの使用を計画する必要があります。

若手が陥りやすい問題には、"自信過剰による安易な着手"と"臆病による不十分な切開・骨削除"の両極があります。安全な抜歯のためには「視野の確保」と「焦らず一手ずつ進める冷静さ」が不可欠です。glidsでは、実際の埋伏抜歯の動画解説や豚顎を用いた模擬実習を通じて、術式の理解と判断力を養成します。 下顎の水平埋伏智歯は、手術の中でも最も頻度が高く、難易度が急激に上がる処置の一つです。適切なフラップ設計、骨削除の範囲、歯牙の分割方法、そして下歯槽神経との距離を考慮した術前評価が不可欠です。CTの導入により、近年では神経損傷リスクを事前に把握することが可能となり、安全な施術の鍵となっています。

2. 根尖病変に対する歯根端切除術

根管治療を複数回行っても改善がみられない慢性根尖性歯周炎に対しては、外科的アプローチである歯根端切除術(アピコエクストミー)が適応となります。この処置は、原因となる根尖部の感染組織を完全に除去し、逆根管充填を行うことで再発を防ぐ手術です。

基本手技の流れは以下の通りです:

1.局所麻酔下での切開とフラップ剥離:唇側粘膜に放射状または水平切開を加え、十分に骨面を露出。

2.骨開窓:小帯部や周囲の重要構造を避け、バーや超音波チップで病変周囲の骨を除去。

3.根尖部の切除:通常は3mm程度の根尖を切除し、分岐部・イスムス・マイクロクラックを含む感染源を除去。

4.逆根管形成と逆根充:マイクロミラーを用いて根管の中心を確認し、超音波チップで逆形成。逆根充材で封鎖。

5.掻爬と洗浄、縫合:肉芽組織や嚢胞壁の徹底掻爬後、生理食塩水や次亜塩素酸で洗浄し、縫合閉鎖。

逆根管充填の材料と選択肢

現在の第一選択はMTA(Mineral Trioxide Aggregate)で、封鎖性・生体親和性・硬化後の安定性に優れています。近年は操作性を改善したBiodentineEndoSequence BC RRMも使用されるようになっています。これらの材料は湿潤環境でも硬化が安定し、長期的な封鎖性が報告されています。

従来用いられていたIRM(強化酸化亜鉛ユージノールセメント)やスーパーEBAと比較して、MTA系材料は再発率の低下に寄与することが多くの文献で示されています。

若手が陥りやすい注意点

・骨開窓の範囲が狭く視野不良になり、根尖の完全切除が不十分となる。

・逆形成が浅く、逆根充材の封鎖が不完全で再感染のリスク。

・肉芽組織の掻爬不足により術後の炎症が残るケース。

glidsでは、マイクロスコープの使い方、逆根充材の練り方・充填のコツ、縫合デザインまで含めた実習を通じ、若手が自信を持ってこの手技に挑めるよう徹底サポートを行います。 根管治療を複数回行っても改善がみられない慢性根尖性歯周炎に対しては、根尖の外科的切除(アピコエクストミー)が適応となります。骨を開窓し、感染源となる根尖部を切除後、逆根充処置を加えることが多く、マイクロサージェリーの導入により予後も改善しています。

3. 顎堤形成術(トリミング)

義歯作製時に、義歯床下にある骨突起(鋭利な隆起)や不整な粘膜を整える処置です。義歯装着時の痛みや不適合を軽減し、安定性を高める目的で行われます。軟組織と骨の境界を丁寧に扱う技術が求められます。

4. 小帯切除術

小帯切除術は、舌小帯・上唇小帯・頬小帯などの軟組織に対して行う比較的シンプルな手術ですが、咬合・発音・審美性に大きな影響を与えるため、適応の判断と術式の選択が非常に重要です。

適応と目的

・舌小帯短縮症(ankyloglossia):舌の可動域制限により発音障害や咀嚼障害、将来的な咬合異常を引き起こすことがある。

・上唇小帯異常:乳歯列や混合歯列期に見られる正中離開の一因となることがあり、矯正治療との連携を要する。

・義歯安定への影響:頬小帯や舌小帯が過度に発達していると義歯の吸着や安定に支障をきたす。

一般的な術式の流れ

1.局所麻酔の浸潤・伝達:術野の明確な麻酔と出血コントロールのため、適切なブロックが必要。

2.小帯の把持・牽引:目的部位を明示し、緊張方向を確認した上で切開ラインを決定。

3.切開・剥離:単純切開法(scissor technique)では、直線的な切離を行い、その後縫合により止血。

 Z形成術や菱形切除+縫縮法なども選択され、瘢痕拘縮を防ぎながら可動性を高めることが可能。

4.縫合と止血:吸収性縫合糸(5-0 Vicrylなど)で粘膜を縫合し、術後出血を予防。

注意点と術後管理

・過剰切除のリスク:特に舌小帯では舌下動静脈やワルトン管(Wharton's duct)を損傷しないよう注意が必要。

・術後の可動性リハビリ:舌小帯術後は、発音や可動性を維持するために舌の運動トレーニングを指導する。

・年齢と成長との関連:学童期における切除時期の適正化が、矯正的介入や発音発達への影響を最小限にする。

glidsの実習では、基本術式の練習に加えて、舌小帯短縮症の重症度分類(Kotlow分類)に基づいた適応評価や、Z形成術の実際的な切開・縫合ラインの設計まで含めて、症例ごとの判断と手技を徹底的に学びます。 上唇小帯や舌小帯が強く緊張している場合、咬合への影響や発音障害を引き起こすことがあります。この際、単純切開による切除から、Z形成などの形成術まで症例に応じた選択が重要となります。特に舌小帯の場合、術後の舌運動リハビリまで見据えた管理が必要です。

5. 歯の外傷に対する脱臼・亜脱臼の整復

スポーツ外傷や事故により発生する歯の外傷では、即時対応が予後に直結します。亜脱臼では再植と固定、脱臼では正確な整復とスプリント固定が必要であり、診断・処置・患者指導のすべてに正確性が求められます。

6. 粘液嚢胞の摘出

粘液嚢胞(mucocele)は、小唾液腺の外傷や閉塞によって唾液が周囲組織に漏れ出し、嚢胞状に貯留した病変です。特に下唇内側に好発し、小児から若年成人に多く見られます。

特徴と診断のポイント

・好発部位:下唇(咬傷や慢性的刺激による)

・臨床所見:半球状、柔らかく、波動を伴うことが多い。自潰と再発を繰り返すこともあります。

・鑑別診断:血腫、血管腫、粘膜下線維腫、神経鞘腫などと区別が必要です。

一般的な摘出手技の流れ

1.局所麻酔:周囲組織まで含めて十分に浸潤麻酔を施します。

2.切開と剥離:嚢胞の外郭を確認しながら、周囲の小唾液腺ごと含めて切除します。嚢胞のみを破って摘出すると再発しやすいため、周囲腺組織の除去が肝要です。

3.止血と縫合:縫合糸は吸収性の4-0または5-0 Vicrylなどを用いて、唇粘膜にテンションをかけすぎないよう閉鎖します。

4.病理検査提出:良性と考えられる場合も、切除組織は原則として病理提出を行い診断を確定させます。

若手が陥りやすい注意点

嚢胞壁の破断による不完全摘出:術中に嚢胞が破れると全体像の把握が難しくなり、再発の原因になります。

切除範囲が狭すぎる:再発防止のためには、隣接する小唾液腺も含めて除去する意識が必要です。

術後の血腫形成や縫合不全:特に下唇の緊張が強い部位では、縫合の工夫が求められます。

粘液嚢胞は見た目以上に術後再発率の高い病変であり、“確実な切除”と“粘膜の緊張に配慮した縫合”が成功の鍵です。glidsでは、実際の摘出動画や縫合法の実習を通じて、若手歯科医師が自信をもって対応できるよう技術習得を支援しています。 スポーツ外傷や事故により発生する歯の外傷では、即時対応が予後に直結します。亜脱臼では再植と固定、脱臼では正確な整復とスプリント固定が必要であり、診断・処置・患者指導のすべてに正確性が求められます。

こうした“ミニ手術”の多くは、患者から見れば「歯を抜くだけ」「粘膜をちょっと切るだけ」と軽く見られがちですが、術者にとっては確実な診断力と細やかなテクニック、術後トラブルへの想定力を要する処置群です。特に若手歯科医師にとっては、最初に経験する“手術的判断”の連続であり、この段階で苦手意識が芽生えると長期的に外科処置を回避する傾向が生じてしまいます。

したがって、ミニ手術を「失敗しない」だけでなく、「丁寧で質の高い処置」に昇華するための考え方と技術を身につけることが、将来の臨床スキル全体の土台となります。

B.抜歯ひとつで変わるキャリア:技術と印象力の両立

抜歯は、一般歯科医が最も頻繁に行う外科処置の一つですが、その“当たり前さ”ゆえに見過ごされがちな難しさと奥深さがあります。とくに若手医師にとって、単なる歯の除去作業ではなく、「診断力・技術力・説明力」の三位一体が問われる極めて重要な治療プロセスです。

抜歯は“見えないスキル”の集合体

抜歯が「成功して当たり前」と見なされる理由は、患者の期待水準が高く、術後に何か問題が起こればすぐに“失敗”と見なされるからです。そのため、

・痛みを最小限にする術中操作

・スムーズな術後経過

・術前説明と術後フォローの丁寧さ といった要素が、総合的な“医師としての印象”に直結します。

若手が学ぶべき基本技術と考え方

外科処置の精度は、「準備段階の技術」と「術中の流れ」がどれだけ構造的に理解され、正確に再現できているかで大きく差が出ます。以下に、若手歯科医師が確実に習得しておくべき3つの基礎操作について、それぞれの重要性・具体的なポイント・陥りがちなミスと対策を解説します。

なぜ重要か?

・切開・縫合の精度は“器具の持ち方”に大きく依存する。

・筋肉の緊張が少ない持ち方が“術中疲労”を軽減し、長時間処置の安定性を保つ。

メスの基本持ち方

・**鉛筆持ち(pen grip)**が基本。

・切開線が曲線や複雑な方向を描くときは、鉛筆持ちで手指の微調整を効かせる。

・注意点:握りこむ「包丁持ち」は力の制御が粗く、微妙な角度調整ができない。

持針器の操作

・母指と環指をリングに通し、人差し指と中指で支持する。

・ニードルは45〜60度の角度で把持、針先は先端1/3あたりを保持する。

・“針がねじれず、組織を優しく通る”ように回転させて縫合する技術が肝要。

切開のポイント

・切開ラインは解剖に基づく戦略:血流を阻害せず、視野を確保しやすい直線または放射状。

・粘膜緊張線を考慮して「裂けにくい位置」に設計。

剥離の要点

・骨膜を残したまま粘膜を一括して剥離する(フルシックネスフラップ)。

・ヘッドストローク(前進剥離)とリトラクトストローク(逆方向)を使い分ける。

・骨面に対して“刃を滑らせる”感覚で、出血と痛みを最小限に。

縫合の基本動作

・針の通過角度は組織に直交させ、左右対称な深さ・距離で刺入。

・皮膚縫合より口腔粘膜は裂けやすいため、引っ張らず“押し合わせる”縫合法を意識。

・クロスマット、垂直・水平マット縫合は創面の安定性向上に有効。

骨削合の原則

・骨の削除は最小限で最大効果が基本。

・視野を優先しつつ、歯の脱臼スペースを逆算して設計する。

バーの種類と用途

ラウンドバー(#6, 8):開窓や粗い削合。

ストレートバー(#557):歯冠分割やスロット形成。

スピアーシェイプ(#703):細かい骨面の調整、滑らかな仕上げ。

力と回転のバランス

押しつけすぎない圧力と断続的な接触が、過剰加熱や骨の壊死を防ぐ。

・回転数は20,000~30,000rpmが目安で、水冷を確実に行う。

若手が陥りやすい失敗と対応

バー先端の“点”で削るミス → 骨面の形成がガタガタに。

水冷不良による熱損傷 → 硬組織の融解や術後疼痛の原因。


これらの操作は、「できているつもり」になりやすく、体系的に教わる機会が少ない分、現場での失敗や“なんとなくの癖”がそのまま習慣化してしまいがちです。glidsでは、ゼロベースでの操作教育と動画・豚顎実習による感覚の再現トレーニングを組み合わせ、若手歯科医師の“手術的センス”を構造的に育てるカリキュラムを提供しています。

こうした基本操作を「なんとなく」ではなく「論理的に」理解・実行することで、臨床外科の安定感と信頼性は劇的に向上します。

glidsでは、「今さら聞けないけど実は知らない」抜歯の基礎技術を、体系立ててゼロから学べるカリキュラムを整えています。

1. 器具の基本操作:

持針器とメスの持ち方:精密な切開と縫合を実現するために、持ち方から力の入れ方、角度まで指導。

挺子と鉗子の使い分け:歯根形態・歯周支持組織の状況に応じた器具選択が、外科的侵襲を最小限に抑えます。

2. 切開・剥離・縫合:

フラップ設計:粘膜の緊張と血流を考慮した設計が術後の治癒を大きく左右します。

剥離テクニック:骨膜を損傷せずに剥離できるスキルは、術中視野の確保と感染リスクの軽減につながります。

縫合法:単純縫合だけでなく、クロスマット縫合や水平マット縫合など、創面の安定化と止血に応じた使い分けを学びます。

3. 骨の削合と歯根分割:

バーの選択と当て方:回転数・押し圧・水冷のタイミングが予後に影響するため、感覚ではなく“根拠ある操作”を徹底。

歯根の分割方法:歯根形態・湾曲・癒着を読み、割断する方向・深さ・順序を論理的に設計する力が求められます。

患者への“印象形成”と説明力

抜歯の成否は、患者の不安感・納得度・信頼感に大きく左右されます。術前にしっかりとした説明がなければ、術後にどれだけ良好な結果でも「不安だった」という印象が残ります。

glidsでは、

術前の説明トーク例

術後の不安に対する対応パターン

スタッフとの連携による患者教育 といった“医療者側の演出力”を磨く視点も重視しています。

抜歯によってキャリアが変わる理由

抜歯は、症例数を重ねることで確実な技術と冷静な判断力を養える、数少ない“トレーニングとしての手術”です。

・難抜歯のリスク回避

・トラブル症例のリカバリー経験

・患者からの信頼の獲得

これらはすべて、歯科医師としての臨床力と“紹介される側になる力”を伸ばす基盤となります。

まとめ:抜歯力=歯科医師力

抜歯は単なる処置ではなく、「外科力・説明力・信頼構築力」を問われる総合スキルです。glidsでは、単なる手技習得にとどまらず、医師としてのキャリア構築に直結する“抜歯力”の磨き方を、あらゆる角度から提供します。

若手時代に抜歯に真摯に向き合うことは、その後の臨床のすべてを支える「外科的センス」の土台となります。 義歯作製時に、義歯床下にある骨突起(鋭利な隆起)や不整な粘膜を整える処置です。義歯装着時の痛みや不適合を軽減し、安定性を高める目的で行われます。軟組織と骨の境界を丁寧に扱う技術が求められます。

C.親知らず・難抜歯の地雷を避ける判断力

智歯の抜歯は、若手歯科医師が最も頻繁に遭遇する“地雷症例”の代表格です。とくに下顎の水平埋伏智歯は、術前評価のわずかな見落としが大きな偶発症につながるため、知識と冷静な判断力が求められます。

親知らず、特に下顎の埋伏智歯には、以下のようなリスク因子が複合的に絡みます:

下歯槽神経管との近接・交差(神経麻痺リスク)

開口障害・智歯周囲炎の併発(視野不良・術後感染)

歯根の異常形態(湾曲・癒着・C字根)

患者側の協力度の問題(恐怖心・既往歴・全身状態)

これらを総合的に把握せずに「見た目だけ」で“抜けそう”と判断することは、若手が最も陥りやすい判断ミスです。

若手が見落としやすいリスク評価のポイント

1. 術前診査の落とし穴

パノラマだけで判断していないか? → CTを併用すべき症例(特に神経近接例)を見逃すと大事故に。

埋伏方向と傾斜角の理解不足 → 水平でも“骨縁より下にあるか否か”で手技の難度が激変。

2. 解剖的バリエーションの無視

頬側骨壁の厚みが薄いと骨折リスク

舌側皮質板が脆弱な症例は迷入の可能性

3. “自分で抜けるか”だけで判断していないか?

「できる・できない」ではなく、

患者にとってベストな治療戦略か?

偶発症が起きた場合にどうフォローできるか? という“全体最適”の視点で判断することが必要です。

【術前】

CTによる神経との距離測定
抜歯難易度分類(Winter, Pell & Gregory分類など)
開口量や舌の巻き込み傾向、術野の展開性の評価
必要に応じてステロイド・抗菌薬の術前投与プラン

【術中】

焦らず分割→脱臼スペース確保→牽引の順で冷静に対応
骨削除量は“足りないより少し多め”がトラブル回避の鍵
必要に応じて縫合設計を変えてドレナージも検討

【術後】

感染・腫脹予防のための薬剤処方と生活指導

神経麻痺が起きた場合の説明テンプレート・記録方法

腫脹のピークや開口障害の推移を事前説明しておくとトラブル回避につながる

地雷症例の抜歯を無理に引き受けて術中に中断・紹介となれば、患者の不安・信頼失墜・紹介先との連携ミスのリスクが一気に高まります。

逆に、術前にしっかり診断し、
・「この症例は大学病院での処置が適切です」
・「安全性を考えて設備の整った施設での処置をおすすめします」 と伝えられる医師は、“見極められる医師”として評価されます。

・CT画像の読み解きトレーニング
・智歯抜歯の分類ごとの戦略設計
・豚顎を使った骨削除・分割・脱臼の一連操作
・術後トラブルの想定と対応ワークショップ

D.トラブル対応のリアル:出血、神経麻痺、感染への備え

口腔外科処置において、避けて通れないのが“術後トラブル”への備えです。特に若手歯科医師にとっては、処置そのもの以上に、トラブル時の冷静な対応力とリスク管理能力が問われます。ここでは、出血・感染・神経麻痺という3大偶発症を中心に、術前・術中・術後の注意点とglidsでの学びを紹介します。

出血リスクの高い患者とは?

・抗血栓薬(ワーファリン、DOAC)服用中の患者
・高血圧・肝疾患・血液疾患の既往がある場合

術前に確認すべきポイント

・止血機構に関わる薬剤や疾患の有無を問診で把握
・必要に応じて主治医と連携し、中止or継続の判断基準を明確に

術中・術後の止血操作

圧迫止血と縫合止血の組み合わせが基本
・フラップ下にガーゼやスポンゼルを挿入し、持続的圧迫と創面の閉鎖を図る
・止血剤としてはアドストリア、サージセル、トロンビン含有ガーゼなど症例に応じて選択

glidsで学べること

・出血予防を見越した切開線・縫合デザイン
・止血効果と吸収性を両立した素材の比較と使い分け
・“術後に出血したときの対応プロトコール”演習

術後感染の典型症状

・術部の腫脹・発赤・疼痛の増強
・開口障害や嚥下障害が出現する重度感染
・顔貌の非対称・発熱・圧痛の進行

感染リスクの高い処置

・智歯周囲炎が急性期にある埋伏抜歯
・開放創が残る抜歯部位(ドレナージ創)

術前・術後の抗菌薬戦略

・術前はペニシリン系 or セフェム系の内服開始(状況によりメトロニダゾールの併用も)
広範囲の腫脹や蜂窩織炎では点滴ルートでの全身投与が必要
・抗菌薬の選択肢と投与経路の判断を誤ると感染の悪化を招く

glidsで学べること

・術前炎症コントロールの考え方と投薬計画
・感染性腫脹と非感染性腫脹の鑑別
・感染性合併症が出たときの紹介基準・紹介文テンプレートの作成

E.保険診療下での限界と工夫:サージカルテクニックを学ぶ意味

日本の歯科医療制度において、外科処置を保険診療の枠内で行うには、時間・コスト・設備の制約という“見えない壁”があります。その結果として、若手歯科医師の多くが「外科は赤字になる」「トラブルが怖い」といった先入観から、手技そのものを避けがちになります。

しかし、あえてこの“制限された環境”で工夫を重ねることこそが、歯科医師としての臨床基礎力を大きく高めるチャンスです。glidsでは、この保険診療のリアルを踏まえたサージカル思考を、実例ベースで学ぶことができます。

骨の削りすぎを避けるバー選択

・コストが限られる中でも、「どの部位に、どのバーを、どの深さまで使うか」という戦略が外科の本質。
使い捨てを前提としないバー管理や、多用途バーの活用など、経済性と機能性のバランスが求められます。

洗浄・吸引体制の工夫

・高価なサクションシステムがなくても、2助手体制を工夫した吸引導線設計で術野確保は可能。

・洗浄の水量・水温・タイミングは、感染予防と視野確保を両立させるテクニックの一部と捉える。

縫合デザインの美しさ

・単純縫合だけでは創面がよれやすく、術後の治癒に影響。

・保険点数が同じでも、「クロスマット縫合」「Z形成縫合」など、美しく無理のない創閉鎖は患者満足に直結。

限られた器材でどう治療品質を最大化するかを、症例ベースで検討。
・「これがあればできる」ではなく、「これ“しか”ない中でどう工夫するか」を学ぶ演習。
・実際の開業医環境に即した設定での模擬オペ・ディスカッション。

限られた点数の中で、患者に「丁寧だった」「安心できた」と感じてもらえる処置には、無駄のない設計と美しい術中動作が欠かせません。つまり、外科的な成功とは“結果の良さ”に加え、“過程の納得感”に支えられています。

若手時代にこの「制約下での最適解」を考え抜いた経験は、自由診療やチーム医療に移行しても確実に生きてきます。glidsでは、その“考え方の軸”を身につけるための実践教育を徹底しています。

一つひとつのトラブル対応に確実な準備があれば、“どんなときも安心できる先生”という印象が確立されていきます。それは技術とは別の価値であり、長期的な患者信頼や紹介の増加につながる“見えない資産”です

現場で「失敗できない」不安を抱えながらも、相談できる先輩や練習機会が限られている――そんな若手歯科医師が日本中に多数存在します。glidsは、そうした悩みに応える“唯一無二の外科教育コミュニティ”として設立されました。

glidsでは、ただ技術を教えるのではなく、実際の症例をベースに「なぜこの判断になったのか」「何を優先したか」を可視化し、若手が“臨床現場に立つ前に、あたかも体験したかのように学べる”ことを重視しています。

1. 難症例の判断トレーニング:

・CT画像や術前写真をもとに「この症例は自分で抜くべきか、紹介すべきか?」を実際に判断。
・グループディスカッション形式で、他の若手や指導医の視点と比較しながら“判断軸”を育てる。

2. 模擬手術実習(豚顎を用いた骨削合・縫合):

・豚顎を使ったリアルな触感の中で、骨の削合、歯の分割、縫合のトレーニングを反復。

・“初めて切る恐怖”を実習段階で克服し、現場で冷静に対応できる“筋肉の記憶”を形成。

・解剖学的ランドマークの把握から、道具の選び方・体の使い方まで、実際の術野に即した内容を再現。

3. 医療事故レビューと実践型ディスカッション:

「誰かの失敗」から“自分の防衛”を学ぶ。実際に発生した医療トラブル症例をもとに、原因分析と予防策をグループで考察。

EBMやガイドラインではカバーしきれない“現場の揺らぎ”に対して、どう向き合い判断するかという視点を育む。

同世代の悩みを共有できる環境:卒後1~5年目の若手に特化し、「誰にも聞けなかった」を解決する横のつながりを形成。

症例ベース+ディスカッション形式:受動的な座学ではなく、「自分ならどうするか?」を徹底的に考える能動型カリキュラム。

SNSやオンライン診療時代の外科教育:ビジュアル教材や動画指導を活用し、現代的な学びやすさを追求。

学びの本質は“シミュレーション力”

glidsが提供するのは、単なる手技の習得ではありません。

トラブルが起きたとき、どこまで想定していたか?

他の選択肢を考慮したうえでの選択だったか?

患者にとって最も納得のいく説明ができていたか? という“思考プロセス”を自ら再現できるようになることが、最大の目的です。

図形

「練習できる場所」と「相談できる仲間」――glidsはこの2つを両輪として、若手歯科医師が外科処置への不安を乗り越え、自信を持って患者に向き合えるようサポートしていきます。

医師人生の“最初の成功体験”を、glidsで一緒に積み上げていきましょう。特に若手歯科医師にとっては、最初に経験する“手術的判断”の連続であり、この段階で苦手意識が芽生えると長期的に外科処置を回避する傾向が生じてしまいます。

したがって、ミニ手術を「失敗しない」だけでなく、「丁寧で質の高い処置」に昇華するための考え方と技術を身につけることが、将来の臨床スキル全体の土台となります。

口腔外科の基本技術――抜歯・剥離・縫合・骨削除――は、教科書や動画ではなかなか伝わらない“動きの精度”や“判断の軸”が求められます。しかし、それらはすべてセンスではなく、構造的に学び、練習すれば必ず身につく技術です。
本セミナーとglidsの教育カリキュラムでは、

・「自信をもって手を動かせる若手医師」

・「トラブルにも冷静に対応できる判断軸をもつ臨床家」

・「患者としっかり向き合える説明力のあるプロフェッショナル」

を目指し、全国の若手歯科医師に“外科の第一歩”を届けていきます。

・日本口腔外科学会:https://www.jsoms.or.jp/
・日本歯科医学会連合:https://www.jads.jp/
・厚生労働省 e-ヘルスネット:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・PubMed(Oral Surgery トピック):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=oral+surgery